自然写真家 永幡之さんとは昨年名古屋COP10会議中に行われたIUCNのレセプションでお会いしました。 

今回、貴重な写真とご報告を頂いたのでお電話すると「この様な時に、動植物の調査どころでは無い・・と言われるかとも思いましたが、どうしても今こそ調査しておかねばならない!と強く思い、現地に入って調査し写真を撮って来ました。」との事でした。被災地では生き物の事まで手が回らないのが現状でしょう。ですが、永幡さんのこの決断は今後、貴重な資料を生む事となるでしょう。アリの姿から私も大きな勇気を頂きましたよ。永幡さんは又岩手の海岸線の調査に出ています。お気をつけて!生き物やこの地球の為に宜しくお願い致します。以下、永幡さんからの報告です。

 「津波から生き残ったアリのこと」

イルカ様

 名古屋のCOP10の折に、IUCNのパーティーでご挨拶させていただきました、山形県の永幡嘉之と申します。

 悲しみの渦に巻かれた震災から1ヶ月余が経ちました。津波により、実に多くの動植物も、棲家ごと波に消えました。写真家としてよりもむしろ、動植物の調査を長年続けてきた身として、4月に入って地域の状況がある程度落ち着くのを待ち、福島県や宮城県の海岸線の惨状を調べ歩いています。

 例えば、海岸から数キロの大きな湖が津波をかぶり、真水にすんでいた多くのフナが、突然流れ込んだ海水によって犠牲になりました。砂浜に暮らしていた多くの虫たちを何年も調査してきましたが、砂浜そのものが流されて消えました。これらは、あくまでも自然現象の一部です。ただ、過去の大津波と違い、人が生きものの棲家を、ごく狭い場所に細切れにしてしまっていたところを津波が襲い、どこにも安全な場所が残らなかった、あるいは、過去には自然界になかったはずの重油やガソリンが流れた、という点が、過去とは違います。

 それでも、打ちひしがれて歩く中で、思いがけない希望を見ました。津波で1週間以上水没していたはずの海岸線で、土のなかでどのように耐えたのか、暖かくなると同時に2種類のアリが巣を掘り始め、懸命に砂粒を運び出していたのです。ただ、しばらく行動を追っていましたが、3匹が入れ替わり立ち代わり運び出すばかり。本来ならひとつの巣に数十から数百いるはずなのですが、生き残ったものはわずかだったのでしょう。

 こうした調査は、人々の暮らしが平穏を取り戻すまでは、あまり表に出すべきでないと考えています。それでも、波に覆われたはずの場所で、懸命に生活を始めていたアリの、小さな生命から、私自身が再生への大きな希望をもらい、この話をどうしてもお伝えしたく、突然のメールで失礼とは思いつつ一筆させていただきました。

 季節の変わり目、どうぞご自愛ください。

tobiirokeari

懸命に砂を運び出すトビイロケアリ

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津波で死んだクサガメ、

越冬明け間近だったはず

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津波で大量に漂着したフナ、

津波(海水)の塩分に耐えられなかった

永幡之さんご報告ありがとうございました。