もう一人、私たちを待っていてくれたのは、タイの古都アユタヤに住むポックです。彼は18年くらい前からの友人で、今回もポックのやさしい微笑みと手料理に癒されました。

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イルカTシャツは全て持っているのです。

 タイを経由して、初のカンボジアに着きました。シエムリアップと言えば世界遺産「アンコールワット」であまりにも有名です。世界中から人々が沢山訪れますが「がんばれ日本!」と書かれた一台のバスにもすれ違いました。

img_1471 「少しでも多くカンボジアに触れて欲しい」と、まずは素晴らしい遺跡へ沢山連れて行ってもらいました。トゥク・トゥク(バイクで引っ張るリヤカーのような乗り物)の運転手ソムナンさんは、ずっと同行してくれて自宅にも呼んでくれました。奥さんの野菜料理を沢山ふるまってくれたんですよ!
img_1482 ロシア人マリーナとドイツ人アンニャはかえるの唐揚げが「美味しい、美味しい」と大絶賛!!私はもちろんベジタリアン!!キュウリの炒め物は最高でした。
img_1611 雨季ではない今回も早朝に降った雨で市場はプールの様になっていました。ですから家は高床式が多いのです。町から外れるとすぐにのどかな田園地帯が広がります。竹や葉で作られた高床式ではない家の床は土のままで敷かれている物は何もありません。
img_1599 ワッタナーさんが言いました。「昔はここは空も見えないくらい、うっそうとした森だったけど、焼かれたり、計画もないまま勝手に伐採され続けて、こんなにスカスカの森になってしまった・・・。」
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シエムリアップから車で約1時間の所にあるベンメリアは遺跡内の地雷が最近撤去された所です。崩れた石が山の様に積んである所をよじ登るのを地元のスタッフが手を引いて助けてくれました。 

img_1557 そんな中庭でひっそりと祈る仏様は、人間の歴史をずっとご覧になっていたのですね・・・。
img_1595 遺跡の塀を見ると、石を持ち上げる木が切られていました。
img_1424  タ・プローム寺院では、ガジュマルの巨木が遺跡にからみつき、同化する様に伸びていました。鳥の糞に運ばれた種子が水を求めて伸びたそうですが、その生命力は凄いですね。「森だった森」は今はスカスカですが、きっと時と共に豊かな森に蘇る・・・。そう思えました。 
img_1593 遺跡の中には子ども達が沢山います。物売りをしたり、ゴミ箱からペットボトルを探して売るのです。中には物乞いをする子もいて、胸が痛くなりました。ワッタナーさんは「学校を作ってもらっても子ども達は学校に行かれない。本も鉛筆もないのです。まずは、母国語の読み書き。そして算数、そして英語や日本語と教えられればもっと自分達で良い暮らしが出来ます。」「物乞いをしないで生きて行かれる為にも寺子屋の様な所を作ったらどうでしょう」と私達は話しました。「いつか、図書館も作りたい。もっともっと勉強したい若者達への無償の場になる筈」と熱く語り合いました。私達の力はとても小さいかもしれない。けれど「大きな力」には及ばない力を「小さな力」は持っている。そう思いました。一人ずつでも少しずつでも出来る事から国境を越えてやって行こうよ!私達は「小さな力」なんだ。 
img_1512  トゥク・トゥクの運転手ソムナンさんがめずらしい所に連れて行ってくれました。カンボジアの家族が連れだって集まる大きな縁日の様な所!屋台のご馳走をビニールシートを敷いた上に車座になって家族がワイワイやっている。子ども達は手動式のメリーゴーランドで大喜び!「ささやかな庶民の楽しみだよ!」とダーツでもらった商品に彼も大喜び。なんだか幼い頃を懐かしく思い出す。幻想的な世界でした。
img_1667 帰国の前日「もう一ヶ所、お連れしたい所があります」と夕暮れの街をトゥク・トゥクで走りました。その場所の事は知っていましたが、私から「その場所」の事を切り出す事に躊躇していたところでした。彼らにとってそこは大きな傷痕なのですから。その場所とは「キリングフィールド」と呼ばれている所です。ポルポト時代に罪なき人々が百万人以上虐殺された処刑場の跡に今はお寺が建ち、慰霊塔が建てられています。白い塔に向かって行くと白い大きな龍のうろこの様な物が見えました。ガラス張りになったその中には、亡くなられた方々の御遺骨がそのまま入れられていました。何も語らぬその視線の前で私はただ手を合わせる事しか出来ませんでした。「私は他の人の痛みなど何も判っていなかったのだな・・・」そんな声が私の魂を揺さぶりました。そして、人の心の恐ろしさと暖かさ。どちらも持っているのが人間なんだな・・・。アンコールワットの回廊に刻まれていた「極楽と地獄」の図はそのまま私達の心の断面なのではないか・・・と思えました。
img_1741 ソンカーンと呼ばれるお正月になりました。人々は稼いだお金を握りしめ、故郷を目指し家族が集まります。お寺ではそんな人々の願いが夜空に花を咲かせました。皆が皆の幸せを願っています。私も自分の心を見失わず、いつも他の人の痛みが少しでも分かる人でありたいと再び思えたカンボジアに沢山の事を教えていただいた旅でした。

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泥の花 この世の風を すべて受け

この旅で得た御恩は、これからお返し出来るように私はなりたい・・・。

 2011年 春  イルカ